こんにちは。たかみつ、あかりです。
私たちは2021年4月から北大・国際食資源学院の博士課程に入学し、博士課程の学生として1年弱を過ごしました。
大学の多くの友人が、学部卒・修士卒で就職していくなか、研究を続けるために残るというのはレアな選択で、情報もそんなに多くないと思います。
そこで、私たちの現時点での生活や研究、将来に対する思いを記事にしてみようと思いました。
- 研究は好きだが博士課程に進むかどうかは迷っている
- 博士課程の実際の生活を知りたい
といった方向けになればいいなと思います。
あかりとたかみつの自己紹介記事はこちら👇
忙しい?平日1日のスケジュール
ーー修士課程の時も博士課程を見据えて研究していた2人の生活は、博士課程に入ってから変わったのか?お互いに普段のスケジュールを聞いてみた。
あかり:私たちの研究室は9時から16時まではコアタイム(研究室にいないといけない時間帯)で、そこから色々やってたら18時ぐらいになる。
18時以降残るかどうかは日によるかな。21時まで残ることもあれば、すぐ帰るときもある。平均して帰宅するのは19時半ぐらいだと思う。
たかみつ:俺もコアタイムに関しては同じだけど、けっこうお腹が空いたらすぐ帰るね(笑)18時半に帰ることが多いかな~。
ごはん食べた後、研究やるときは家でもやるかも。ChromeとかWindowsのリモートデスクトップを使って研究室のデスクトップを遠隔で操作してて、家のテレビをモニターとして使ってるから、2画面でできるし、家でもデータ解析とかできる環境は整ってる。
あかり:私は逆に家では集中できないから研究やらないわ(笑)
たかみつ:いや俺からすると、ごはんを我慢して研究室に残れることのほうがすごいよ(笑)俺も家ではだらけちゃうし、学校は学校で騒がしい時があるから、場合と気分によって場所を変えてる。
あかり:同じ研究室のポスドクの先輩(女性)は、旦那さんのぶんの料理も作ったりしながら研究していたよね。あれは本当に尊敬する。買い物はネットスーパー使ってるって言ってたけど。
たかみつも修士課程の時代は自炊好きだったよね?最近はどう?
たかみつ:今でも週2~3日は自炊をしてるよ。ごはん好きだから(笑)
でも買い物の時間もったいないから買い物はやめて、コープの配送サービスを使ってる。
前はスパイスから作るような凝ったカレーばかり作ってたけど、時間がもったいないから、スンドゥブとか親子丼とか鍋とか、手軽に作れる料理が増えてきたかな。
買い物や料理を時短し始めたのは、忙しくなったからだと思うね。
忙しいし、やっぱ単純作業じゃなくて頭使うこと増えたよね。論文とか書くのはどう頑張っても早さの限界があると思う。
あかり:私も頭使うことは早くできない。朝の集中している時間にマックスの集中で3時間ぐらいやったら、それ以降は集中力はどんどん落ちていくね。
たかみつ:それは完全に同意だわ。
休日(土日)何してる?
ーー博士課程では休日も研究する必要があるのか?気分転換には何をしているのか?
たかみつ:夏はお散歩してた。大通公園で読書してたよ。読書は、読書記録を取り始めた。これまで本の内容の印象だけ残ってて、うまく説明できなかったことがあって、それじゃ読んだ意味ないと思って、ちゃんとメモしようと思って。
冬は家でNetflix見たり、ウクレレ練習したりしてるかな。
あとは所属していたサイクリングクラブの同期と、道東に旅行に行った。道東の景色が本当に好きで、1年に1回は道東に行かないと駄目な体になった(笑)
あかり:わかる~。道東いいよね。
私は土曜日に授業が10時から14時半まである。月~金で研究して、土曜も授業あるから疲れて、そのあとはダラダラしてるわ(笑)
元気があれば生鮮市場(生鮮食品が安いスーパー)に買い物に行ったりしてる。日曜やることは、日によるかな。
たかみつはけっこう土日も研究室行ってるよね?
たかみつ:バレた?(笑)土日に研究室に行くことにメリット・デメリットあると思ってて、土日に行くメリットは人がいなくて集中できることだと思う。平日だと誰かに話しかけられたりするし。。。
あと平日だったらミーティングとか実験の予定あって半日まるまる使うみたいなことあまりできないけど、土日は半日使ってデータ解析「だけ」できたりするのが魅力かな。
あかり:私は研究室に人がいるほうが、頑張ってる人が周りに見えてモチベーション上がるほうだな。あと博士課程までいくと同期も少ないし、誰かと話せたほうがモチベーション上がる。だから土日はあまり行かない。
土日に研究せずに罪悪感を溜めて、月曜からの「やらないと」という気持ちにしてる(笑)
たかみつ:俺もそれがまさに土日に行くことのデメリットだと思ってて、土日も「作業できる日」にカウントしてるから、平日で絶対終わらせるみたいな気合いが入らなくて、効率が悪くなってると思うんだよね。そこは気を付けたい。あかりみたいに土日は完全に休むって思ってるほうがいいのかもしれない。
あかり:あとさ、土日で生活リズムは狂う?私はさっき言ったみたいに土曜日は授業あるから、わりと保ててるかなと思うんだけど。
たかみつ:俺さ、寮というかシェアハウスみたいなところに住んでて、そこに一緒に住んでる後輩は学業とか特に重視してなくて、本当にわけわからん生活リズムで暮らしてるんだよね(笑)
その人たちと金土日に麻雀打つのが気分転換なんだけど、麻雀しちゃうと寝るのが遅くなって次の日はきついな(笑)
あかり:いいな~。この歳まで大学残ると、そういう濃いつながりのコミュニティなくなるから羨ましい!
学振・奨学金
ーーあかりは日本学術振興会(通称「学振」)の特別研究員DC1、たかみつは北大と日立製作所が運営しているファンド(以下「日立」)から、それぞれ生活費と研究費を頂いて研究生活を送っている。あかりの学振採用時の記事はこちら
あかり:正直、もし学振の生活費なくて返還型の奨学金だったらけっこうきつかったなと思う。今でも、携帯代とかは親に払ってもらってるから、完全に自立してるとは言えないな。。。
たかみつ:俺も払えてない。。。
あかり:でも、最近色んな博士課程を対象とした奨学金制度ができてきたから、救われるようにもなってきてるとは思う。博士行く人は調べて、とりあえずどんどん書いたほうがいいね。
たかみつ:そうだね。俺もそういう制度が増えてきたところでたまたま取れてよかったよ。
あかり:日立のほうが研究費に余裕あって羨ましい。日立の研究費は海外渡航とかもカバーされてるよね?生活費も区分が「奨学金」だから住民税もないし。対して、学振は「給与」だから税金払わないといけない(笑)
たかみつ:変な話だよな(笑)でも1年過ごしてみて、やっぱり学振のネームバリューはすごいと思ったよ。学振取ったって人は一目置かれると思う。
日立の奨学金は知名度ないから、ほかの研究者に紹介してもみんなポカーンとしてる(笑)
事務の人に聞いたんだけど、俺の奨学金は、手続きの面でも「○○研究員」っていう肩書きがないから、色んな承認がすぐに通るかどうかわからないらしい。
あかり:でも、私が研究で海外行くとしたら、若手研究者海外挑戦プログラムに応募しないといけない。その申請書を書いた時間のわりに受かるかどうかもわからないから、それをすでにカバーしてる日立は魅力的だな~。
たかみつ:でも若手研究者海外挑戦プログラム書いて受かったら実績1つ増えるじゃん!
あかり:その時間で論文書いたほうが実績になるよ(笑)
たかみつ:それは間違いない(笑)
研究費
ーー研究に使う試薬や機器を買えるようになってみてどう?
あかり:今までは指導教員に発注してもらってたけど、今年から自分で研究費を使えることになって、自分で発注するのが楽しいよね。
たかみつ:楽しいね。ちょっと経営者みたい。
あかり:ポスドクの先輩は、研究費の買い物で物欲が満たされて、ふだんの買い物での物欲は抑え目らしい(笑)それを聞いて私も研究費の買い物で物欲を満たすようになった。
研究費って金銭感覚のタガが外れる。例えばプライマー(PCRの起点となるDNA断片)1本1200円で「安い」と思っちゃうけど、日々の生活で1200円ってちょっとした高級ランチ食べれる。
たかみつ:研究費の買い物で物欲がなくなる話、面白すぎる(笑)
俺も、安定同位体を使った二酸化炭素は1Lで15万円したよ。普通の二酸化炭素はその辺にあるのにね。たしかに感覚狂うね。
コロナ禍の研究生活
ーー2人とも、当初は海外での研究を予定していた。しかし、引き続くコロナ禍の状況や、オミクロン株の感染拡大によって、予定とは少し違った研究をしている。
あかり:もともとアフリカのマラウイでインタークロッピング(複数の作物種を、同時に、同じ圃場で栽培する農法)の研究をしたかったんだけど、コロナでなかなか行けず、現実的には厳しいかなって思い始めた。
そんな時に、熊本・阿蘇での林間放牧(森林での放牧)で土壌に牛の糞とか踏圧がかかったときに物質循環がどうなるのかを調べるプロジェクトが始まって、必要とされるガス測ったり微生物調べたりする技術は自分にあったから、これをメインの研究としてやることになると思う。
たかみつ:俺も最初は修士2年で、アフリカの土壌を使ったショットガンメタゲノム解析(ある環境中に存在するゲノムを網羅的に解析する技術)を学びにドイツに行こうとしてて、それがコロナで遅れ遅れになった。
でも結局、ゲノム解読のあとはPCでの解析作業だから、データだけもらって、Zoomでリモートで解析方法を教えてもらいながら進めることになったな。
でも紆余曲折あって、違う研究でアメリカに行こうとしてる!
留学
ーーたかみつは2022年4月ごろからアメリカ・ミネソタ大学での約1年弱の留学を予定中。
ーーあかりはオランダの研究機関に行きたいと考え始めた状態。
たかみつ:博士1年は、自分の論文もまだ出てなかったし、実験も残ってたから行くのはきつかったかな。 博士1年で行くとなると修士2年の時に準備しないといけないけど、その時は学振落ちたりしていて、そこまで考える余裕はなかったかも。
あかり:私も、研究スキルが博士1年の時点ではなかったんだけど、でも将来的なことを考えたらやっぱりこのタイミングで行きたいなと思った。博士2年の終わりごろからいきたいな。なんでミネソタにしたの?
たかみつ:受け入れ先の先生が、安定同位体でDNAを標識して、その物質がどんな微生物に食べられたかを追跡することに特化してて、そういった最先端の技術を学んでみたかった。
今の指導教員は教育に熱くて、こんな俺に研究の仕方を一から教えてもらって本当に感謝してるんだけど、ここで得た基礎をもとに、さらに最先端のサイエンスをやってる研究室がどんな感じなのかをアメリカで感じてみたい。
あと、その受け入れ先の先生が日本人で北大にもいたことがあるから、最初のコンタクトは取りやすかった!
あかり:コネクション強いのいいな。私は、コロナ前にドイツで行われた学会に行ったときに、その行きたいオランダの研究室の人の発表がとても印象に残ってて、学振が海外の研究機関を紹介してくれるサービスがあるんだけど、その紹介に載ってるところよりも、オランダの先生のほうが私のやりたいこととマッチしてたから、そこに行きたいと思った。
ほかにミネソタにコネクションはあるの?
たかみつ:学部時代の食品系の研究室の先輩がそこで博士課程やってる。まだクレジットカード何使ってるかとかしか聞いてないけど(笑)
家も決まってないし、本当にいろいろ早くやらないとやばい!家の一部を学生に貸してくれるサービスのようなものがあるらしくて、それを使って滞在することになりそう。
研究以外の活動
ーー研究以外で積極的に行っている活動はあるのか?
たかみつ:あかりが土曜日に受けてる授業のこと教えてよ。
あかり:CoSTEPというプログラムを受講してる。かなり勉強させてもらえたよ。
受けている人たちのレベルが高かった。たとえば私は実験でピペットとかの能力を高めてきた代わりに、アートの知識とか意見を伝える方法を全然知らなくて、授業についていくのが大変だったんだよね。
でもその中には、理学部化学科みたいにバリバリの理系のこともやりながらアートや意見を伝えることが得意な人もいて、劣等感を感じたね。
たかみつ:なかなかできない経験だね。なんでCoSTEP始めたの?
あかり:4月ぐらいに、なんで博士課程入ったかちょっと不安になっちゃって、研究一本はできないと思ってたから飛び込んだんだ。
たかみつ:研究一本でできないという気持ちはわかるな~。そういえばあかり、チーズを土の上に置いて撮影してたよね(笑)
あかり:そうそう。あれもCoSTEPの人に頼まれて(笑)でもデザイン重視で置いたから、あまり分解が進まなかった。見た目は悪くなるけど土に埋めたほうが分解されるかも。たかみつは研究以外でなにしてるの?
たかみつ:ぐろばる(このブログ)かな(笑)
他には研究室の効率悪いExcelとかの作業をボランティアで自動化したりしてるよ。ザンビアの気象データをPythonでワンクリックでダウンロードできるようにしたり。
研究者用のTwitterもやってて、世界中の研究者の情報を見たりしてる。早稲田大学でとある微生物解析関連のRのパッケージを作ってる人に、そのパッケージのうまく動かなかったところをTwitterのDMで伝えたり、ドイツのポスドクに質問したり。
あと、土壌医検定の勉強もしてるよ。
将来どうする?
ーー就職先や結婚・出産などをどのように考えているのか?
たかみつ:どうしようかな~、まだ決めてはないけど、アカデミア一本ではないことは確実かな。国立研究所や企業の研究職も見ながらになると思う。
違う話になるんだけど、ワンダーフォーゲル実習のTAで行った、北海道の黒松内町で出会った、再生産的放牧をしているアメリカ人の農家さんと今でも連絡を取ってて、博士3年とかになったら1か月ぐらい論文書きつつそこに滞在して、放牧の修行をしたいな!
将来的には放牧して、農場の横に研究室を作るのが夢かな(笑)
あかり:いいな~。私も阿蘇に滞在したい!
私もアカデミア一本ではないことは確実だと思う。研究を忙しくやるより田舎でゆっくり暮らすほうが性格的には合ってるかも。子ども産んだり家庭も大事にしたい。
たかみつ:俺も子ども欲しいし、家庭あっての幸せだと思うから、そこのバランスはきちんと取りたいな。
ーー博士課程1年を終え、研究や将来についての考えも芽生えてきたようです。ぐろばるでは、今後も2人を追いかけていきます。
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