【北海道で化石掘り】生物系博士学生の夏休み②

雑記

こんにちは。土壌微生物の研究をしている博士学生のたかみつです。

この生物系博士学生の夏休みシリーズですが、前回は、准教授と本気のクワガタ採集をしてきました。その記事はこちら↓

【北海道でクワガタ捕り】生物系博士学生の夏休み①

今回は、生物系博士学生の夏休み第2弾としまして、2021年8月に北海道の某所で行ってきた、化石採集のお話をしたいと思います。

化石採集は、知的好奇心を満たすものとして楽しかったという側面ももちろんあります。

しかし、絶滅した過去の生物に触れることで、今後の地球で持続的に生活していくために僕たち人間がどうあるべきかということを、いま一度考えるきっかけにもなりました。

では、1億年前の地球へ、皆さんをいざないます。

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採集のきっかけ

僕(たかみつ)自身、大学の学部生時代はサイクリングクラブに所属していて、北海道の名所はほとんど自転車旅で行ってしまっており、

また、多くの同期が修士課程卒業とともに北海道を離れてしまったため、何か観光ではない、新しいアクティビテイを探していました。

そんな時、僕と同じ研究室のメンバーに、北大の化石研究会(シュマの会)に所属している人がいて、化石採集に連れて行ってもらえることになりました。

土壌微生物の研究をしていることもあり、地球にも、生物にも興味はありますし、子供のころは恐竜にも興味がありました。

しかし、化石採集といっても、なかなか一人では何をしたらいいのかわからず、始めづらかったので、経験者に連れて行ってもらえたのはとてもありがたかったです。

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準備するもの

ハンマー(化石をたたきやすいもの)

その経験者まず言われたのは、「ハンマー買っといて」ということでした。

ハンマーと言っても、よくある叩く面がシリコンのものとか、円形のものでは、石を叩いても割れにくいので、

「金属製で叩く面が四角形のもの」という指定でした。

ハンマーはこんな感じです↓

最近、何かと物騒なので、ホームセンターで金属製のハンマーを買う20代の男性、冷静に考えて怖いですよね、、、笑

釘を打つぐらいなら、シリコン製のハンマーで十分だと思うので。

その日あたりで何かそういう事件が起きたら容疑者になりそうだなと思いながら買いました、、、笑

手袋(背抜き手袋)

背抜き手袋とは、手のひら側がゴムや樹脂で、手の甲側が通常の軍手のようなメッシュになっているものです。

石はとがっている場合もあるので、手袋に耐久性が必要ですが、夏場にゴム手袋をずっとはめていると、蒸れてしんどいですよね。

そんな状況では、背抜き手袋が、耐久性と通気性のバランスがちょうどよかったです。

今度、登山などでも使ってみようかなと思いました。

保護メガネ

石を砕くとき、破片が顔に飛んでくることもあります。

そんな破片が目に入ってしまったら、最悪の場合、大けがにつながります。

してない人もけっこういますが、安全のためには、保護メガネをするのがいいでしょう。

僕は、危険な硫酸などを使う化学系の実験用に、保護メガネを持っていたので、それを持っていきました。

沢足袋

沢足袋(沢たび)は、山のなかの沢を登っていく人たちが使う、防水性の足袋のことです。

採集場所についてはあとで説明しますが、僕はこれを持っていかなかったので、靴下がビショビショになりました。濡れたくない人は、持って行ったほうがいいと思います。

熊鈴

北海道の山には基本的にヒグマが住んでいます。

遭遇してしまうと襲ってくる可能性があり非常に危険です。

沢はクマも人間も、お互いの音が聞こえづらいので、ちゃんと音を立てて人間の存在を前もって知らせてあげる必要があります。

採集場所

採集時のマナー

最近知った概念なのですが、貴重な天然物(鉱石、絶滅危惧種、天然記念物など)が出現した場所は、公表すると、ほかの人がたくさん来てしまい、生態系やその天然物が荒らされる危険性があるため、場所は公表しないのがマナーであるそうです。

そういう意味でも、よく知っている人としか行けないですね。

なので、僕が行ってきた地域は、北海道で化石が有名な地域ということだけしかお伝えすることができません。

ですが、その地域のなかの、森に入ったあとの説明はできるので、ここからはその説明をしたいと思います。

北海道は昔は海のなかだった!?

先ほどもお伝えしましたが、今回行ったのは、沢(山のなかの小川)です。

これは、山の上のほうの未開拓の岩石が、川を流れてくるうちに削られて、人間にとっても化石を見つけやすい大きさになっているからです。

今回は、海の古代生物であるアンモナイトの化石を狙っていたのですが、なぜ山の上からアンモナイトの化石が転がってくるのでしょうか?

実は8000万年前ごろ、北海道の大部分は、海のなかでした。今は陸上に出てきている部分も海の底だったみたいです。

今回狙ったアンモナイトは、白亜紀(1億4550万年前~6600万年前)に繫栄した種類らしいので、ちょうど北海道が海の底だった頃のものです。

その頃の海底が、隆起して、今は山奥になっているため、海の生物のアンモナイトの化石も、山の上から沢をつたって転がってくるみたいですね。

なので、北海道でアンモナイトの化石を採集するには、沢を徐々に歩いていくという方法がよくとられるようです。

参考:北海道という島のなりたち第1回:白亜紀(はくあき)ってどんな時代?

採集の手順

「ノジュール」を見つける

化石を発掘する際、「化石が内部に含まれる石」を砕いていくのですが、まず、そういった石を探さなければいけません。

その際、「ノジュール」が大事になってきます。

ノジュールとは、「生き物が入った石」そのものを指すのですが、もう少し細かく言うと、「生物の腐った身から出てきた成分と、海水のカルシウムが化学反応を起こして、炭酸カルシウムという物質になってできたもの」のようです。

僕も最初は見分けることができなかったのですが、2時間ぐらいすると慣れてきて、見えるようになってきました。

個人の感想ですが、少しきめが細かい、クリーミーな見た目です。

また、そういったノジュールには、表面に生物の影のようなものが少し見られました。

このノジュールを見分けることができれば、あとは割っていくだけです。

参考:なんでノジュールの中には化石が入っているの?

割る

少しずつ割っていくのかと思いきや、意外だったのは、けっこう強く叩いてもいいということです。

もう化石が見えていて、周りの石を外したい場合は慎重にやるようですが、ノジュールの時点では、パカっと石が開けるまでカンカン叩きました。

出会った化石たち

前置きがとても長くなってしまいましたが、やっと今回出会った化石たちを紹介します。

ポリプチコセラス

これは、僕の研究室の後輩TGくんが取りました。

釘みたいで、面白い形状ですが、アンモナイトの一種らしいです。

一般的なアンモナイトのイメージは平たい巻き貝だと思いますが、世界各国では、見つかっているだけでもアンモナイトは約1万種いるみたいです。

アンモナイトのイメージを崩すアンモナイトとして、印象的でした。

これは本体ではなく、アンモナイトがいた痕跡ですが。

ゴードリセラス・デンセプリカータム

通称「デンセ」と呼ばれている、僕たちが行った地域でよく見られる種類のようです。

こちらは、一般的なイメージ通り、平たい巻き貝でした。

5 cmぐらいの体長のものと、20 cm級のものを見つけることができました。

こんなに大きさは違いますが、どちらもデンセみたいです。

20 cmのほうは、少し崩れていて全身取れなかったのですが、全身取れていたら、まあまあ貴重だったのかなと思います(笑)

イノセラムス

こちらはアンモナイトではない、二枚貝です。

餃子みたいな流線型の模様があって、綺麗でした。

自然界の生命が作り出す模様って、意図を持ってそうなったわけではないはずなのに、何か綺麗さがあるのは、神秘的だなと思いました。

水の抵抗を受けるものが淘汰されて、抵抗を受けないもの(流線型)が残っていって、進化したんですかねえ、、、

化石採集を通じて感じた、持続的社会の必要性

今回、化石採集を通じて、約1億年前の生物と触れ合うことができました。

キリストが生まれてから約2000年ですから、1億年前は、その5万倍の期間の年月をさかのぼった時期であるということです。

1億年の時を経て、昔の生物と触れ合えた、時代は違っても、地球上でだいたい同じ地点にいられたということに、

地球の歴史の壮大さ、自分のちっぽけさ、いま出会えている人・モノに出会えた奇跡、色んな感情が芽生えました。

また、今回狙ったのは1億年前に栄えた種類でしたが、アンモナイト自体は、3億5000万年間も形を変えつつ、地球上に生息していたようです。

キリストが生まれてからは2000年ですが、では、少しアンモナイトと対等に比較できるように、それを「人類が生まれてから」に広げてみましょう。

人類とほかの霊長類を区別する際、直立二足歩行で分けられることがありますが、最初に直立二足歩行をしたのは、約400万年前に登場した、アウストラロピテクスだと言われています。

アンモナイトが生息した3億5000万年間は、人類が登場してから現在までの期間(400万年間)のなんと87.5倍のようです。

とんでもない期間ですね。

(※我々がアンモナイトを区別するより、霊長類を区別するほうが細かく区別している可能性があるので、人類の歴史と単純に比較するのが適切とは言えませんが、ここは壮大さだけ伝われば嬉しいです。分類は、人間がただ区別しやすいようにしてるだけで、自然界には何の意味もないので。)

そんな長い歴史のある地球の姿を、短期間で変えている生物がいます。

我々、人間(ホモサピエンス)です

最後の氷河期以降、地球の気候は安定し、平均気温は約1万年間ほとんど変わりませんでした。

この時代は「完新世」と呼ばれています。

その安定のなか、人間は農耕を始めることができ、次第に工業化し、文明を発展させました。その結果、産業革命以降、人間の活動によって温室効果のある二酸化炭素濃度が上昇し、この100年程度で気温は約1℃上昇したと言われています。

2021年、気候変動に関する政府間パネル(IPCC: Intergovernmental Panel on Climate Change)では、現代の地球の温暖化は人間活動の影響だと断定しました。

今では、人間が地球に強く影響している「人新世」という時代区分に突入したと言われています。

かつて無尽蔵にあるかと思われた土地や化石燃料を使って発展をしてきましたが、発展し過ぎたがゆえ、その発展以外の方法がわからず、じわじわと、自分たちで自分たちを苦しめてはいないでしょうか?

アンモナイトが3億5000年間、繁栄し続けられましたが、このペースでいくと、人間はそんなに長く繁栄できるでしょうか?

地球ができたての頃は、今よりもっと二酸化炭素が多く、熱に包まれていたと言います。

そんななか、植物が二酸化炭素を吸収し、昆虫が蜜をもらう代わりに植物の受粉を助け、その種子を鳥が運んで荒地を草原にし、草食動物が草を食べ、肉食動物が草食動物を食べ、動物の糞は微生物によって分解され地下水や川に流れ、海の生物の栄養となり…

というように、生物は互いに助け合い、資源を循環させることで生きてきました

大昔の生物が形を変えて、長い年月をかけてできたのが、石油や石炭ですが、人間はそれを掘り起こして、燃やして二酸化炭素にして、短期間で大気中にぶちまけてしまいました。

これでは、他の生物たちが作り上げてきた循環が台無しです。

人間が、「地球史上、最も他の生物に迷惑をかけ、自滅していった生物」にならないためにも、いま一度、これまでの生活スタイルを考え直す段階にきているのではないかと思います。

参考:地球の限界 Netflix

まとめ

今回、1億年前のアンモナイトに触れて、地球の歴史の壮大さに感心しました。

また、たかが2000年文明を作った、地球の歴史の中ではちっぽけな存在であるのにも関わらず、それを攪乱する人間の傲慢さも感じました。

もちろん、地球には感情はないと思うので、どっちでもいいのかもしれません(笑)

隕石が落ちたり、氷河期が来たりするので、人間が作った環境問題もその一つなのかもしれません。

しかし、人間には意思があり、その環境問題も、止めようと思えば止められるはずです。なので僕は、人間がそこで問題を止める方向に動ける生物であってほしい。これも一つのPhilosophyですね。

また、どういうわけか、自分の死後も、自分が生まれた文明は長く続いてほしいという感情があります。なので、みんなで協力して地球環境を安定させて、「後世に文明をつなぐために生きた」一人になれれば嬉しいです。

まずは、普段の消費や食生活での選択で、少しずつ貢献したいですね!

P.S. 食資源学院の、K先生も化石掘りが趣味だそうです。

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