高校で物理・化学選択から農学部そして生物系の博士課程に進んだ僕がおすすめする生物学関連の本5選

専門的な内容
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はじめに

こんにちは。たかみつです。

1年というものは早いもので、ついに博士課程2年目に突入してしまいました。

一般的にはずいぶん遅いですが、博士課程進学者もそろそろ次の進路を見据えないといけない時期です。

進路を考えるうえで、ふと自分の経歴を振り返ると、忘れていたけど重要なことがありました。

というのも、この前、ぐろばるメンバーのかけると、他の博士友達(この2人は農業工学系の研究室)と話していた時、その博士友達が高校の時は生物選択だったけど今は工学系のことをやっていて、僕は高校の時は物理選択だったけど今は生物系のことをやっているという、逆転現象の話題になりました。

こうして考えてみると、高校の時に何を勉強していたかというのは、重要ではあるとは思いますが、「絶対的に」進路を決定づけるものではないので、いま高校生の人や、大学の学部選びで迷っている人は、高校の時の科目に縛られずに進みたい方向に進んだらいいのではないかと思います。

そもそも北大は、この逆転現象が起こりやすいです。

なぜなら北大は、総合理系(1年時の学部学科が決まっていない状態)で入ってくる人が多いのと、2年時からの移行先がその成績で決まる科目に、物理は入っているけど生物は入っていないという謎システムが(少なくとも2015年当時は)あり、

「生物系の学部学科に行きたいとしても、物理の成績が良いほうが行きやすい」という風潮がありました。

しかし、そうやって高校の物理アドバンテージを使って、生物機能化学科というバリバリ生物系の学科に進んだのですが(進んだ理由は違う記事に書きたいと思います)、初期の段階では、やはり膨大な知識を必要とする大学受験勉強を「物理・化学メインでやったか」と、「生物・化学メインでやったか」という差は大きく、基礎的な知識が圧倒的に不足していました。

そんな時には、もちろん教科書や参考書を読むのが一番だと思いますが、教科書や参考書が淡々と事実を書いてあるのに対し、本には「なぜ、何が、どこで、どういうタイミングで、どのように、起こったか」というストーリーがあります。

僕としては、そういったストーリーがあったほうが覚えやすかったので、入門者には、いきなり難しい教科書や参考書を読破することを目指すのではなく、関連する本から入るのもおすすめです。

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生物学関連のおすすめの本5選

当時、役に立った本や、最近読んだけど当時読めば良かったと思う本を5冊選んでみたので、これから勉強する人の参考になれば嬉しいです。(※専門度は僕個人でつけた5段階評価)

生命科学的思考 高橋祥子(専門度:1~2)

 

生物について知的好奇心がそこまで湧かない場合でも、生物について知って何が面白いの?役に立つの?ということを考えさせてくれる本です。東大博士課程在学中に遺伝情報系のスタートアップを立ち上げ、研究者と起業家という2つの側面を持った高橋祥子さんが書いています。生物系研究者を目指していない人でも、人間関係やビジネスで悩んだときに、人間も生物なので、生物は「遺伝子を効率的に残すような行動をする」ことや「流動的であることで保たれる」という、生命科学的な思考を持っていると、悩みをやわらげられたり、最適な行動を取れるということがわかります。この世界にはある程度「遺伝で決まる」部分があるなかで、それに抗うための思考ツールとしての生物学に触れてみてはどうでしょうか。

 

生物と無生物のあいだ 福岡伸一(専門度:2)

 

「生物」と「無生物」の違いは何か。この問題は科学者のなかでも未だに決着がついていません。しかし生物に特有の性質はおそらく○○なのではないかと、近代の分子生物学の発展の経緯とともにわかってきた事実を紹介しながら、その問題に挑んでいく話です。また、今となっては一般の方もよく耳にするであろうPCR検査のPCRや、mRNAワクチンのmRNAですが、どういう仕組みなのか(タンパク質合成の基礎)、そしてその世紀の発見の瞬間のストーリーを知ったときは僕もかなり興奮しました。福岡伸一さんの研究留学時のエピソードもあり、モチベーションも上がります。

生物はなぜ死ぬのか 小林武彦(専門度:3)

 


皆さんは「死ぬ」ことが怖いでしょうか?僕はまだやりたいことがけっこうあるので死にたくないです。ですが、これは将来を想像できたり、寿命が自然本来のものより延びている人間特有の感情で、人間以外の多くの生物にとって死は平然と起こります。もしも、死がなければ、今でも最古の生物が生きているはずです。しかし逆説的ですが、環境変化が著しい地球において、死がなければ、生物文明は何億年も繁栄することはできなかったでしょう。「死があることで生をつないできた」ヒントがこの本に描かれています。生殖によって自分よりも多様性の面では環境に適応する可能性のある子を残すメカニズム(遺伝・進化の基礎)とともに、死を考える一冊です。

精神と物質 利根川進 立花隆(専門度:4)

 


新型コロナウイルス流行以後、よく耳にする「抗体」はタンパク質の一つです。タンパク質は、DNA→mRNA→アミノ酸→タンパク質というセントラルドグマと呼ばれるフローによって合成されますが、ここで一つ疑問が生じます。なぜ私たちは、新型コロナウイルスのような未知の抗原に対して働く抗体を、自分たちのDNAから作れるのでしょうか。まるで地球上の全ての抗原の情報が元々自分たちのDNAにプログラミングされているかのようですが、オミクロン株が出現したように、ウイルスも変異し次々と新しいものが出てくるので、そんなことあり得るのか?と考えてしまいます。本には、そんな多様な抗体を作り出すメカニズムを解明しノーベル賞を受賞した利根川進さんの、学生時代から受賞理由になった研究にいたるまでの壮大なストーリーが描かれています。当時は「分子生物学」という学問も始まったばかりで、今のようには手法も多くはない中、利用できる手法を巧みに利用してメカニズムを解き明かしていった過程にも注目です。

遺伝子・多様性・循環の科学:生態学の領域融合へ 門脇浩明 立木佑弥(専門度:5)

 


これはもう専門書なので入門ではないと思いますが、昨今のSDGsでも大切にすべきとして、度々取り上げられている「生態系」や「生物多様性」を考える上でとても重要な概念が書かれていると思います。生物をマクロな集団として捉えたときに、例えば「種Aと種Bがどのような相互作用を持っていた結果、どのくらいの割合で、とある地点に生息しているか」そして「そのバランスに影響を与える環境要因は何か」などを考えるのが群集生態学と呼ばれる学問です。僕は修士1年のときに、軽い気持ちと研究室の環境が整っていたために土壌微生物群集解析(土壌中の微生物由来DNA配列を網羅的に読み取って、どんな種がどれぐらいの割合存在するのかを調べる解析)を始めましたが、当時、群集生態学の知識はほぼ皆無で、先輩の紹介でこれを読んだときに、とんでもないカオスな世界に首を突っ込んでしまったなと思いました(笑)。深堀りしていくと、生物・化学・統計学など幅広い知識が必要で、発展途上の学問なので今も世界中の研究者が次々と新しい解析手法を生み出したりしています。僕も正直まだまだ勉強中です。しかし、統計学に対してそこまで拒否反応がないのは、高校時代に物理をやっていたからかもしれません。スティーブ・ジョブズのconnecting dotsの話のように、何の経験が繋がってくるかは後からしかわからないということなのかなと思います。すいません、話が脱線してしまいました(笑)

番外編:これから読みたい生物学関連の本

働かないアリに意義がある 長谷川英祐

 


我らが北大・長谷川先生の有名な本です。人間でも、チームで行動していると「働いていない人がいる」と思ってしまったり、逆にボーっとしている間に他の人たちが作業を終わらせてしまったみたいなことがあると思います。この本の説明を読むと、アリの社会も人間のような社会構造のようですし、驚くことに働かないアリがいることがとても重要なようです。環境に適応した個体が残っていくとしたのがダーウィンの進化論ですが、それが集団としても起こるのか(個体にとっては利益のない適応でも集団にとっては良い適応)をしたものが残っていくのか、まだ読んでないので想像ですが笑、とても興味深いです。

おわりに

今回は生物系関連のおすすめの本でしたが、今後は、「大学院で研究生活をするうえでおすすめの本」なども紹介していきたいなと思います。

また、物理・化学選択から農学部を志望した理由についてもいつか書きたいですね。

今後も博士・研究関連の発信をしていけたらなと思います。

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