「企業の養殖業」と「地域の養殖業」

こんにちは、じゅんです。
社会人になって半年になりました。仕事にも慣れ、まさみとの取り組みなど、新しいことに挑戦する余裕ができてきました。

今回のテーマは「企業の養殖業と地域の養殖業」です。
養殖は誰でも好き勝手にできるわけではなく、漁業権が必要です。
その権利は、地元の漁協や漁業者に優先的に与えられています。
しかし、近年漁業法が改正され、企業の新規参入を促す決まりに改正されました。

企業の新規参入は地場産業の衰退とともに今後加速することが予想されます。地場の水産業に、外部企業の水産業が共存するために必要なことってなんだろう?、企業参入って本当に地域にとっていいの?と疑問に思ったので、この記事を執筆しました。

本記事では、企業養殖について概要を確認しつつ、参入される地域からの視点で企業養殖の参入について考えてみたいと思います。そして、最後に私の近況を少し報告したいと思います。

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漁業法改正と企業参入


冒頭で、養殖業は誰でも好き勝手に養殖ができるわけではないと述べました。
漁業権」、養殖業の場合は「区画漁業権」が必要です。
区画漁業権が付与されれば、一定の期間、一定の水面で排他的に養殖業を営むことができます。

この区画漁業権の取得には優先順位があり、地元の漁協や漁業者に優先的に免許されてきました。

しかし、最近は漁業者の減少・高齢化が進み漁村の持続性が課題となっています。

そこで漁業法改正では、利用されなくなった漁場については、「地域の水産業の発展に最も寄与すると認められる者」に漁業権が免許されるようになりました。つまり、企業を新規参入させて地場産業を盛り上げよう!って感じの狙いです。

技術力や資本力を持つ企業の参入を促すことで、生産効率の改善や雇用創出による地域の発展が期待されています。

漁場を有効利用している既存の漁業者の漁業権は守られているので、劇的に企業の参入が進むというわけではありません。ただ、大手企業は養殖に力を入れていますし、一部の地域、一部の魚種(マグロとか)では企業参入が進んでいることを耳にします。

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企業参入に対する漁業者の意識

 「浜の持続可能性」のために、企業参入が促されたわけですが、参入される側である地域の漁協や漁業者は、企業参入をどのように考えているのでしょうか?
 

 企業参入に関する先行研究を見てみると、企業参入実績の有無にかかわらず、漁業者は企業参入に対して、マイナスの感情を持っているようです。

 というのも、技術力や資本力のある企業によって自分たちが淘汰されかねないこと、参入しても短期で撤退する可能性があること、漁場環境の悪化などのデメリットが生じうるからです。

 ただ、生産性の向上や雇用創出による経済効果があるのも事実。ですので、企業参入に対しては、デメリットを相殺するよう企業と十分調整を行なって、企業の参入を受け入れる地域もあります。

 企業が参入地域を選ぶ際の優先順位として、漁場環境の次に、地域、特に漁協との関係性が報告されていることからも、企業と地元漁協との調整は、企業参入にとって重要なことと言えます。
(山田、大南、松井 2016)

企業参入の事例〜長崎県五島市、マグロ養殖資本の誘致〜 

マグロ養殖の企業参入をいち早く進めた、長崎県五島市のふくえ漁協を例に企業参入の事例を紹介します。

ふくえ漁協の背景

 五島周辺は、自然環境に恵まれ、マダイ・ブリ類・真珠などの養殖が盛んに行われてきました。
しかし、1990年代以降、養殖マダイやブリ類の価格低下によって、養殖経営が悪化し、80年代に100近くあった経営体が93年には、30経営体ほどにまで減少しました。経営体の減少に伴い、漁場の未利用・定利用が生じるとともに、漁協の経営が悪化しました。 

企業参入までの道のり〜反対意見への対応と企業との交渉〜

 そのような中で、マグロ養殖を展開する企業から、五島への新規参入が打診されました。
漁協としては企業参入に好意的でしたが、地元漁師からは反発の声が上がったそうです。というのも、その企業が希望する海域が、キビナゴ刺網やエビ底曳網の漁場として利用されていたからです。漁協側が経営悪化を説明し、代替漁場を提案することで、漁師との合意が取れたそうです。

また、企業参入にあたり、漁協としても企業側にきちんと条件を提示することが重要です。ふくえ漁協は、漁業権行使料の支払いや、漁協の購買事業等の利用、種苗の地元購入、撤退時の原状回復、地元住民の優先雇用などを提示し、企業側が合意した上で、企業参入が決まりました。

企業参入の効果

 マグロ養殖の参入により、生産地への経済的効果が確認されています。
2010年には漁協の繰越欠損が解消され、2011年で漁協への経済効果が約4,320万円にのぼります。
また、2010年頃は企業と契約関係になる漁業者も増え、種苗であるヨコワの供給を通じて、1名あたり100万円近い所得を確保していると報告されています。

漁協が中心となって、企業と調整を行い成功した企業参入の例と言えるのではないでしょうか。
(鳥居 2012) 

企業参入への私の考え

ここからは、かなり主観的になりますが、私が個人的に考える企業養殖への考えを述べたいと思います。

私の住む街の水産業も時代の流れで、従事者の減少や高齢化が進んでいます。
したがって、生産性向上と雇用創出が期待される企業参入の必要性を感じる時があります。
ただ、企業参入によって、外部企業が主体の「企業の水産業」になってしまわないか、という懸念を抱いています。

というのも、私の住む街は過疎化が進み、街のアーケードはシャッター街で、レストランやスーパーは大手チェーンばかりです。生活していると、外部の企業に街が乗っ取られている感覚を覚えることがあります。
私の街にとって水産業は、地場で価値を創造し、外貨を稼いでいる唯一の産業といえます。
これが企業の参入により、「地域の水産業」が「企業の水産業」になってしまうのではないか?、本当に外部に生かされている街になってしまうのではないか?と思うのです。

大学時代は経済学的視点で、大規模化&資本投入することで省人化して、人材を2次、3次産業に回せばいいと思っていました。しかし実際は、人材の回し先である2次、3次産業なんて域内にはありません。したがって、水産業が省人化されたら、より過疎化が進むのでは?と思います。

企業参入を地域活性化の手段として考えつつも、「地域の水産業」の主体である、地域の小規模漁業者が生き残る方法を模索していきたいと思いました。

近況報告

にしこやまさみが近況について、報告しているので私も少し。

「水産業が〜」、「地域が〜」とか自分の意見を述べたけど、じゃあ自分が地域のために何かアクションを起こせるかというとそうでもないし、そもそも「なんで水産業とか地域のことを考えているのかな?」って思うことが最近よくあります。それに連鎖して、今いる自分の立ち位置とか進む方向で頭を悩ますこともしばしば。常に悩んでいるっていうのが、今の自分です。

ただ悩みながらも、「もう一回研究がしたい」って思いが強くなっているのも感じます(修士時代、めちゃしんどかったのにね笑。)
また、最近は仕事上まさみと連絡を頻繁に取るのですが、その時に話に上がった「研究者の妄想をビジネスで実行できる会社」っていう彼のビジョンにかなりワクワクすることも(冗談半分の話だったらすみません。)

修士の論文をなかなか投稿できていなかったり(先生すいません)、まさみとの取引もまだまだ課題があるけど、、、

自分の気持ちに正直に、やりたいことやワクワクすることに進んでいくことができたらなと思っています。現段階で方向は向けている気はする。終わり。

参考文献

(3)水産政策の改革(新漁業法等)のポイント:水産庁

・地域漁業研究第52巻, 第3号, 2012「離島漁業への公的支援と漁業構造の変化」
 (https://www.jstage.jst.go.jp/article/jrfs/52/3/52_29/_pdf/-char/ja

・日本水産学会 2016「養殖業への企業参入に関する漁業者の受入条件に関する分析ー三重県神前浦地区のクロマグロ養殖を事例にー(https://www.jstage.jst.go.jp/article/suisan/advpub/0/advpub_15-00068/_pdf/-char/ja

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