JICAインターン体験記 マダガスカル編③ 現地での活動内容について

さて、ようやく今回はインターンの中身についてお話しさせてもらおうと思います。

調査のデータなどは勝手に出せないのと、細かく説明していると本当にキリがなくなってしまうのでポイントをかいつまんで紹介したつもりなのですが、結局結構長くなってしましました(汗)

分かりにくいところも多々あるかと思いますが、お付き合いいただければと思います。

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活動内容について

インターンの概要

私がお世話になったのはJICAマダガスカル事務所が管轄する「コメ生産性向上・流域管理プロジェクトフェーズ2(PAPRIZ2)」というプロジェクトの事務所です。JICAマダガスカル事務所で勤務していたわけではなく、別の場所にあるプロジェクト事務所を拠点としてインターンをしていました。そのため主に関わっていたのはJICAの職員さんではなくJICAと契約しているコンサルタントの方々です。

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すごーく簡単に説明すると、マダガスカルで主食として食べられており重要な作物である米の生産性を上げるべく、技術の普及、定着に取り組もう!というプロジェクトです。

このプロジェクトでは既に「どう栽培したら生産性が上がるか」という事は概ね分かっていたのですが、その知識や仕組みを農村部の人々に伝える事に苦慮していました。

数名しかいない日本人専門家が全国の農村を回って技術普及にあたるのは現実的ではないので、日本人専門家から地方農業省職員、地方農業省職員から農民トレーナー(農民を代表して研修を受けてもらう)、農民トレーナーから周辺農家、という形でカスケード形式に研修を行ってもらい普及を進めることを試みていました。

そこで、「どうすれば自律的、効率的に普及に取り組んでもらえるか」という事を明らかにするために関西学院大学の先生が研究を行っており、私はその社会調査のお手伝いをインターンとしてやらせてもらいました。私がいる期間で全ての調査を終えるのは無理だったので、後半は私と入れ替わりでもう一人のインターン学生さんにやってもらいました。そのため私は主に地方農業省職員、農民トレーナーを対象に調査を行っていました。

そもそもどうしてこのインターンに興味を持ったのか

私は学部生の頃からずっと国際協力に興味を持っていたのですが、実はこのインターンに行く前はいわゆる発展途上国に一度も行ったこと無く、とにかくまずは現場を見てみたいという気持ちがありました。

また、私はいわゆる理系専攻で科学や技術の面から農業を学ぶ中で、過酷な環境でも育つ改良品種、作物や用途によって使い分けられる肥料など、本当に多くの便利な技術があるのだと知りました。それなのにどうしていつまで経っても農業生産性を十分に上げられない地域があるのだろう?という事を疑問に思うようになり、新しい技術を作るだけでなく既存の物を普及し上手に活用するという観点からも考える必要があるのではないかと考えていました。

そうした興味がこのインターンの目的とマッチすると感じて応募しました。

実際どんなことをしていたのか

業務内容としては、普及を担う現地の地方農業省職員や農村部の人々を対象にプロジェクトに関するインタビュー、心理テスト、読み書き計算などの簡単な学力調査を行いました。

といっても私はマダガスカル語もフランス語も喋れませんので、英語と日本語ができるハイスペックマダガスカル人学生さんに通訳をしてもらいながら調査を進めました。

なんだ、それだけ?と思われるかもしれませんが、これが大変だったんです。。。

まずMAEP県事務所(日本で言うなら地方農政局的なものかな?) をそれぞれ訪れて地方農業省職員の調査を行うのですが、これは比較的スムーズにできました。大変なのがこの後の農民トレーナーに対する調査です。

彼らは往々にして電話を持っておらず、我々が直接連絡を取って集まってもらう事ができません。そのため、地方農業省職員に調査をする際に彼らと相談して日程、時間、場所を決め、農民トレーナーの皆さんに集まってもらうようにアレンジしてもらいます。一応こちらでも彼らの住んでる場所は把握しているのですが、地図上では近そうに見えても案外移動が大変なので集まれないとか、その逆もあったりするので土地勘がある農業省職員と相談しないと難しいのです。

マダガスカルには首都中心部を除いて公共交通機関はほぼありません。かといって車やバイクをみんなが持っているわけでもないので、基本的に調査対象者の徒歩・自転車圏内で調査を行わなくてはなりません。そのため各コミューン(日本で言うと田舎の町や村くらいの規模のイメージでしょうか)ごとにアポを取り、一つ一つ訪ねていく必要がありました。

この調整が何かと煩雑な上、連絡が上手く取れていなかったのかいざ行ってみると約束に時間になっても誰も来ないと言ったことも時々ありました。私たちはプロジェクトの車で移動をしていたのですが、首都中心部は凄まじい渋滞、地方に出ると道がガタガタで移動にかかる時間も馬鹿になりません。更に治安の問題上17時頃には何が何でも首都のホテルに帰らないといけないので、余裕をもって調査地を出なくてはならないという制約もありました。他にも細かいハプニング等はいろいろと…。

こんな場所で調査をすることもしばしば。景色が最高に綺麗でした

これがもし日本だったら、オフィスにいながらZoomでレクチャーしてオンラインで回答してもらってもどうにかなるでしょう。こうした環境では同じ事をやるにもかかる手間が全く違うという事を痛感しました。

学んだこと

インターン参加前の私は正直に言うと「生産性上げる方法なんてみんな知りたがってるよね?どうして普及がそんなに難しいのかな」などと考えていました。インターンで現場を見た今となっては何という甘い考えだったのだろうと思います。

実際に既にPAPRIZを取り入れている人々の中では概ね満足度は非常に高く、これからも続けていきたいという回答が多かったです。

しかし、いきなり来た外国人の言う事を簡単に信じられない、いつもと違う事をしてリスクを負いたくない、流通の問題で肥料などの資材が身近で手に入らない、灌漑設備が使えない、計算や読み書きの能力が不十分で研修を受けても内容が十分に伝わらない、一部のトレーナーの自律性が欠けているなど、普及にあたってハードルは山積みでした。

こうした課題に対し、専門家の皆様は

  • テレビやラジオなどのメディアを利用してプロジェクトの宣伝をする
  • プロジェクトのキャップとT シャツを農民トレーナーに着用してもらう事で周辺農家へのアピールを試みる
  • 施肥量などは計算しなくても分かるように面積当たりの散布量を表にして見せる
  • ドラマ仕立ての動画を作って技術を分かりやすく伝える
  • 試験的にPAPRIZを導入して栽培した田んぼで収量が上がったのを直接見てもらう
  • 学力調査や心理テストの結果をもとに、トレーナーとしての資質が高いと思われる人に農民トレーナーをお願いする

等、ありとあらゆる工夫をしていました。

Tシャツ、着てくれてますね~

「稲作技術普及」という特定の分野に取り組んでいるように見えても稲作の事だけ見ていれば良いという訳ではなく、複数分野からのアプローチが必要なのだと学びましたし、技術や知識があっても、それを使う人や社会の仕組みの事まで考えなければ本当の意味で活かされる事は無いのだと実感しました。

そういった意味では、国際食資源学院がやっているような文理融合教育的な発想ってすごく大事なのかも。

あと印象的だったのが、最低限の経費などを除いて極力プロジェクトからの金銭的補助を出さないという事にすごくこだわっていた事ですね。プロジェクトからのお金を目的に普及に取り組む体制ができてしまってはプロジェクトが撤退した後に誰もやらなくなってしまうから。

普及の有益性を現地の人々に納得してもらい自律的に取り組んでもらうためにはどうしたら良いのか、稲作に限らず様々な開発プロジェクトにおいて大事な視点なのではないでしょうか。

インターンを通して感じた事

このインターンを通して、独特の美しい自然や農村部の人々の素朴な暮らしなど、マダガスカルという国の魅力をたくさん感じました。調査先の農村部の皆さんと一緒に写真を撮ったり、学生さんたちと一緒に道端で売られていたパイナップルを丸かじりしたり、かわいい子供たちと遊んだり、地方の山並みの景色に感動したり…素敵な思い出がたくさんあります。私は今まで貧しい=不幸と決めつけているところがありましたが、必ずしもそうではないのかもしれない、本人たちなりに幸せであればそれで良いのかもしれない、とも考えさせられました。

ローカルご飯!お米が山盛り

子供の可愛さは世界共通ですね

パイナップル丸かじり!!お値段なんと約15円

しかしその一方で厳しい現実も目の当たりにしました。例えば、首都アンタナナリボではストリートチルドレンや乞食の親子を多く見かけました。時々お金や食べ物を渡す事もありましたが(様々な理由から、あげない方が良いという人も多いのですが…)、所詮はその場しのぎで長い目で見れば何にもならない。目の前に明らかに困っている人がいるのに自分には何もできることが無いというやるせなさを感じました。

こうした状況に置かれる人を一人でも減らすには、やはり社会や経済の根本的な発展は欠かせないのだろうと思います。

国際協力とか支援って一歩間違えるとありがた迷惑、自己満足にもなり得るのかもしれないけれど、確実に助けを必要としている人がいるのも間違いないのではないでしょうか。

自分たちの善意を押し付けるのではなく、相手にとって何が一番良いことなのかを考えて貢献できる人間にならなくてはいけないな、と改めて思いました。

また、プロジェクト専門家やJICA職員の皆様には本当にいろいろな面で支えていただきました。まず非常にありがたかったのが安全管理体制がとてもしっかりしているという事!!派遣前のオリエンテーションでも安全講習を受けさせてもらっていましたが、現地に行ってからも改めて現地の状況に即した細かい安全指導をしてもらい、万が一の時の連絡先や医療機関のリストももらいました。また、早朝や日没後などリスクの高い時間帯に活動をさせられたり、治安の不安定な地域に連れていかれることは絶対にありませんでした。もちろん自分自身で危機意識を高く持つことも必要ですが、初めて途上国を訪れた私が全くの無傷で帰って来られたのはこのようにしっかりサポートしてもらえたからだと思います。

加えて、直接業務に関係なくてもJICA職員や専門家、協力隊の集まりに積極的に呼んでいただけたことで、マダガスカルで活動する多くのJICA関係者とお話しすることができたのも非常にありがたかったです。 皆さん親切だし、それぞれに使命感とか情熱をしっかり持たれていて素敵な方ばかりでした。

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最後に

この記事を読んでくださっている方の中で、国際協力に興味があって途上国で経験を積んでみたいと考えている方は是非JICAインターン挑戦してみてほしいです。私のように途上国経験が無い学生でも、目的意識をしっかり持っている人ならきっと大丈夫!かなり倍率が高いようなので一発で合格するのは難しいかもしれませんが、諦めずに何度か挑戦してみてください。私も二度目の応募で合格することができました。

長くなりましたが、最後までお付き合いいただきありがとうございました!

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