未来の農業の切り札「スマート農業」に私が興味を持った理由

専門的な内容

こんにちは、かけるです。

記念すべき初投稿として、自分の研究分野であるスマート農業をテーマに記事を書きたいと思います。

記事中では、自分の学生生活でスマート農業に出会うまでと、スマート農業に関する簡単な説明と今後の課題について述べます。

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スマート農業に出会うまで

なぜ私がスマート農業に興味を持っているのか?それは私のルーツに起因しています。

私の祖母は青森県でりんご農家を営んでおり、小さい頃から土に触る機会が多くありました。

一方で、「食料自給率40%」「大量に廃棄されるフードロス」などの社会問題を小学校で習った時から、食農産業が抱える矛盾を気にしてきました。

大学で農学部に進学した時は、北大農学部にある7つの学科のどれに進もうか、悩んでいました。

どの学科も食や農に何らかの形でアプローチできるからです。(北大の総合入試では1年次の成績と希望で学科を決めることができる。)

結局、総合理系の物理重点で入学しているため、農学への物理学的アプローチができる生物環境工学科に進学しました。

生物環境工学科では、センサーを使った計測実験やトラクタの運転実習など、フィールドワーク中心の実習・実験を経験しました。

大学2年次の実習で見たロボットトラクタの実演

そんな中、10月頃のとある実習の中でロボットトラクタの実演を見た時がスマート農業との初めての出会いでした。

学部2年次だった2016年当時、トラクタが自動で動くなんて思ってもみなかったので、非常にワクワクしたのを覚えています。

以降、3年次の研究室配属から休学している現在まで一貫して、研究ではスマート農業に関するテーマを扱っています。

私の自己紹介記事も見てみて下さい!→リンク挿入

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スマート農業とは?

ロボットトラクタという単語が上で出てきましたが、スマート農業とは一体何なのでしょうか?

「スマート農業」とはどんなものか? ICTを活用した農業のメリットと導入の課題 | 農業とITの未来メディア「SMART AGRI(スマートアグリ)」
ロボット技術やICT等の先端技術を活用し、超省力化や高品質生産等を可能にする「スマート農業」。その主な取り組み、メリット・デメリット、導入事例、課題を探る。

農林水産省は、

「ロボット技術やICT等の先端技術を活用し、超省力化や高品質生産等を可能にする新たな農業」

と定義しています。

北大農場ダイズ圃場におけるロボットトラクタの走行

近年の技術進歩により、私たちの生活は増々便利になりつつありますが、それは産業間で足並みがそろっているわけではありません。

特に一次産業におけるIT実装は遅れていると言われており、様々な作業がアナログのまま残っていたり、紙媒体による記録が一般的であったりと、一次産業はIT化が遅れている印象があります。

それもそのはず、農業従事者の平均年齢は約67歳、50歳ですら若造と言われる世界です。

このように、特異な条件をもつ農業が抱える課題をロボット技術やICT技術で解決しようとしているのがスマート農業です。

スマート農業にはどのような実例がある?

スマート農業の事例を把握するには、農水省が発行している「農業新技術 製品・サービス集」を見ると分かりやすいと思います。この資料では、全64ページにわたりスマート農業技術をまとめています。

農業新技術_製品・サービス集:農林水産省

スマート農業は一括りにはできない技術!

資料を見てまず分かるのは、スマート農業と一括りにするものの、個別技術や対象とする農業形態は全く異なるということです。技術面では、

  1. 経営状態を可視化するアプリケーション
  2. 作業を自動化するロボット
  3. 環境制御のためのセンサー

など多岐に渡ります。また、対象とする農業形態は、

  1. 稲作
  2. 畑作
  3. 畜産
  4. 果樹園芸作

など、これも多岐にわたります。定義によっては、漁業におけるデータ活用もスマート農業にカウントされているかもしれません。

よって、スマート農業を語る上で重要だと思うのは、

「各スマート農業ソリューションがどんな技術を応用していて、どんな農業形態の課題を解決しようとしているのか把握すること」

だと思います。

スマート農業は成長産業である!

資料から分かることの2点目は、大企業からスタートアップまで多くの企業が参入しつつある成長産業であるということです。

2025年には市場規模が3885億円に成長すると言われています。

ヤンマーやクボタなど従来の農業機械メーカーはもちろん、NTTやソフトバンクなど農業に一見関係ないと思われそうな企業も参入しています。

加えて、アスパラガスの自動収穫ロボットをRaaSとして提供するinahoや、牛向けIoTセンサーを提供するFarmnoteなど、スタートアップの参入・躍進も見られています。

スマート農業は一過性のブームか?2025年の市場規模は3885億円へ。
CHAPTER 1 スマート農業戦国時代。 スマート農業は一過性のブームか?2025年の市場規模は3885億円へ。 異業種からの参入が相次ぐ現代農業。スマート農業の普及を目指し、農林水産省は2019年度、全国69カ所で「スマート農業実証プロ

スマート農業の今後の課題は?

では、そんな右肩上がりのスマート農業業界の今後の課題は何なのでしょうか??

生産者のリテラシー的課題

1点目は、どうすれば実際に生産者がスマート農業を使えるようになるかという点です。

先程も述べた通り、農業従事者の大半が高齢者である農業ではアプリケーションやロボットを使いこなせるようになるにも大分時間がかかりそうだということは想像しやすいと思います。

(もちろん、新進気鋭の若手農業者だけをターゲットとした戦略もアリだと思います。)

アスパラガスの自動収穫ロボットを開発しているinahoでは、RaaS(Robot As A Service)としてスマート農業を提供しています。

運用者がロボットの操縦や設定を行うので、テクノロジーに疎い生産者も使うことが出来そうですね。

あくまで私見ですが、技術リテラシーの課題はトラクタが普及する時期でも課題であったと思います。

現代では幅広く使われているトラクタの普及に係る歴史を見てみることで、スマート農業普及への鍵が分かるかもしれないですね。

人間が技術に無理やり合わせるのではなく、技術が人間に寄り添ってくれるような、人間と技術の上手な合致点を探していく必要がありそうですね。

技術導入費用の課題

2点目は、技術を使うことでどれくらい農業経営に効果があるのか分からないという点です。

例えば、ドローンで生育情報を可視化したとしても(これは私の修士研究ですが笑)、正直それがどの程度経営状態を上向きに出来るかは不明です。

ここで、農水省のプロジェクトを紹介します。

農水省では「スマート農業実証プロジェクト」と呼ばれる事業を運営しています。

この事業では様々なスマート農業技術を組み合わせることで、実際の農業経営における使い方や経営効果を測定しています。水田作における実証プロジェクトでは、

  1. ロボットトラクタ
  2. 直進キープ田植機
  3. ドローン
  4. 自動水管理システム
  5. リモコン式草刈り機
  6. 営農管理システム
  7. 食味・収量コンバイン

といった、ありとあらゆるスマート農業技術の実証をしています。

実証関係データ:農林水産技術会議
本ページでは「スマート農業実証プロジェクト」に関する「実証データ」を掲載しています。

結果、実証区では慣行区に比べて10aあたり13%の労働時間短縮を実現している一方で、利益が減少してしまうという結果が得られています。

これは、スマート農業導入に係る機械費増大によるものです。

つまり、今後はスマート農業導入による費用をどのように削減できるのか、そして投資対効果を高められるのかが今後の焦点になりそうですね。

実際に、プロジェクトの中間報告ではスマート農業ツールのシェアリングなど、スマート農業導入に係る導入費用を削減することができるサービスの必要性を訴えています。

先程紹介したinahoでは、生産者は収穫高に応じた利用料を支払えばよいので、初期費用やメンテナンス費用が無料になるとアピールしています。

今後、スマート農業関連サービスを提供するのは誰なのか、総合商社なのかスタートアップなのか公的機関なのか、動向にも注目です。

まとめ

私がスマート農業に興味を持ったきっかけと、最近感じている課題意識についてざっくりまとめてみました。

今後は、個別技術に着目した事例紹介などを行っていこうと思います!

最後までお読み頂きありがとうございました!

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