ワイン酵母について研究をしてきたにしこです。
近年、温暖化の影響で育てられるぶどうの種類が増え、
もともとフランスのワイン産地に似た気候であったことから
北海道ではワイン産業が盛んになってきています。
しかしまだまだ新しい産業…北海道のどんな場所でどんな品種をどのくらい育てられて
どんなワインを作ることができるのかなんて未だ未知数です。
そこで私は、ワイン発酵のミスターキーマンである酵母(Saccharomyces cerevisiae)に注目し、
北海道でのワイン造りにどんな酵母が関わっているのかを研究してきました。
そもそもどうして私が発酵の研究をしてきたのか。
それは私が高校生だった時代まで遡ります。
しかしこれがとっても長いので私が本投稿で伝えたいことを先にまとめておきます。
1. 厨二病万歳
2. ワインは沼
3. 一は全、全は一
以上。
では早速始めます。
高校時代
中高一貫校に通っていたこともあり、受験勉強をする必要のなかった私は
当時いわゆる厨二病拗らせ女子でした。
中学生のある時から「鋼の錬金術師」にがっつりはまってしまい、
私にも錬金術ができると本気で思っておりました。
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授業中に手合わせ錬成を試みたり、「一は全、全は一」について真剣に考えていたものです。
そして読んだことがある人はお分かりだと思いますが
この漫画化学用語もまあまあ出てくるんですねー
なので錬金術師となって、エドワードエルリックの嫁になるには
化学の知識が必要だと考えました。
しかし、残念ながらいい方向に拗れることはなく、
化学の勉強よりも芸術(アニメ)鑑賞に走ってしまい
授業についていけなくなりとうとう化学が嫌い系女子になりました。
愛なんて所詮そんなもん…
(いつになったらワインの話をするのでしょうか)
拗らせたまま、エドの嫁願望を抱きつつ色んなアニメ、漫画に手を出していたら
ついに運命的な出会いを果たしてしまいました。
「もやしもん」
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この漫画が私の人生を(いい意味で)狂わせた張本人です。
一生(いい意味で)恨みます。
この漫画、農学部生は読んだことがある人が多いと思いますし、
これがきっかけで農学部を志望したという人も私の周りは多いです。
それほど私たち世代の農学部勢を沼に突き落とした憎き神漫画であります。
そして漫画あるあるだと思うんですけど、この漫画の主人公、直保(ただやす)、
作画が綺麗になるにつれてどんどんかっこよくなっていきます。
そしてチビなんです。
はい、エドもチビです。私はチビ専なのかもしれないと察した瞬間でした。
(ワインはいつ出てくるのでしょうか)
そしてこの漫画は基本的に「醸し」がテーマなので日本酒の話が出てくるようになります。
それと同時に生物選択だった私は便覧で酵母の写真を見つけてしまいました。
酵母 – Wikipedia
「So cute…」
そして私は再度厨二病を発症してしまいます。
「私もただやすと一緒に酵母見る!」
(二次元と三次元の境界が曖昧な高校生)
漫画と勉強が合わさったらもうそれはやるしかないですね。
そして当時の担任の先生に
「学科の名前じゃなくて研究室の内容で学校を決めなさい」
と言われていた私は、行きたい研究室を決め、北海道大学を志望。
(この経緯についてはいつかお話しします)
学部時代
一浪を経験しながらもエドとただやすに励まされながら無事入学することができました。
そして、なんと高校の時から志望していた研究室に晴れて所属することができたんです。
しかし、そこで衝撃の事実を教授から聞くことになります。
「日本酒はできないなぁーワインだけだよー」
は?この4年間はなんだったんだ?私のただやすはどこ?
と思う瞬間は実はありませんでした。
なぜならもやしもんはフランスでワイン造りもしていたからです。
「私、マリーちゃん(フランス人、可愛い)になれるかも」
という感じでここでも厨二病を発症し、
ワイン、そしてその中でも愛おしい酵母の研究に携わることになったのです。
マリーちゃん、可愛い もやしもん(9) (イブニングKC) – amazon
そしてワインの研究をし続けて早4年。
このブログをやっている同期にも研究室の人にも言ったことのないことがあります。
私ワイン好きじゃない。
悪酔いしがちだし、特に赤ワインは渋いのが多いし、服についたら全然取れないし…
でも先生はいろんな味を教えてくださるし、大学院で受講していたワイン学では試飲の授業もあったので、いわゆる美味しいワインっていうのはなんとなーくわかります。
だから”通ぶる”ことができたんです。
マリーちゃんに憧れてたし…
なので、誰にもバレないまま、もやしもん要素以外ワインに興味を持てずに研究をしてました。
大学院時代
しかし、4年も研究を進めていくと、ワインづくりというものが死ぬほど深いことに気づかされます。
「あんたのことなんて別に興味ないんだから!」
から
「べ、別に好きなんて言ってないし…」
になっていったんですね
ワインは他のお酒とは異なり、外的環境に大きく左右されるお酒です。
だからこそ同じ品種でもぶどうの味もワインの味も地域で異なるんですね。
地域によって天気や土壌性質は異なりますし、その中に存在する微生物も全く違います。
ですからもちろんその地域でしか存在しないワイン酵母もいて、
彼らがワインの醸造に大きく影響していると考えられています。
じゃあ北海道にはどんな酵母がいるの?っていうのが私の研究テーマだったんですけど、
地域ごとやぶどう品種ごとで違ったり、発酵のさせ方によっても違うようで
調べれば調べるだけ新しい発見ばかりだったんです。
(このことについてもいつか書きます)
酵母だけでもこんなに違うのに他の微生物はどうなんだろう、
これに土壌の性質とか天候条件とかが加わったらどうなるんだろう。
そうやってワインの複雑さについて考え始めたらもう沼入り確定です。
複雑すぎて一生かけてもあなたのこと分からない!!
でも気になる!あなたの存在…今あなたは何を醸しているの?私のことも醸しちゃうの…?
母性本能はこうやってくすぐられるんですね。あとはもう(研究費を)貢ぐしかありません。
そしてもう一つわかったことがあります。
私とただやす以外は目で見ることのできない酵母という小さな生き物が生み出す飲み物は、
今日も私のフラッシュメモリを消去し、二日酔いへと誘います。
また、時に何百万という価値で取引され、世界の経済を今日も動かしています。
そんな世界は結局地球上だけで、地球というのは幾億にもある星の一つなんですね。
でも結局酵母も私もその中のちっぽけな一つにしかすぎない。
お?「一は全、全は一」の答えはここにあったじゃん。
となったわけです。私が十年間追い求めていたものを研究からわかることができたのです。
(詳しくはハガレン6巻参照)
つまり…
そんなわけで、私は厨二病のおかげでワインを知ることができ、
ワインを知ったからこそ高校の時に張っていた伏線を回収することができたわけです。
色々書き出してみましたが、ワインは深いよ、ワイン飲めなくても興味なくても面白いよ
っていうことをただただ伝えたかったです。
そして、ぜひ、北海道のワインをお試しください。
ワインが好きじゃない私でも美味しいと感じられる素敵なワインがたくさんあります!
(これについてもいつかお話しできれば…)
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