こんにちは。まさみです!
今回は持続的な水産業と水産流通についてお話しします。
持続的な水産業って言うとなんとなくですけど、皆さんは”水産資源”の悲観的な話題について最初に思い浮かべませんか?
”サンマが獲れない”、”マグロが獲れない”とか毎年時期になるとニュースになる話題なので触れる機会が多いからなのかなって思いますが、ネットで水産資源って調べても色々な記事が出て来ました。
個人的な印象ですが、そういった水産資源の話に比べると、水産流通の話はあまり詳しく知られていない気がします。。。
でも水産資源を管理する上では水産流通について知ることも大事なんだよ!ってことを言いたく今回の記事を書きました!
今回は特に、水産流通で重要な役割を担っている”卸売市場”を中心に、基礎知識から始めて最終的に卸売市場が資源管理にどのように関連しているのかをお話ししようと思います。
卸売市場の基礎知識
卸売市場の種類
機能別に分けて2種類存在します。
機能的区分
- 産地卸売市場
- 産地にある卸売市場
- 水揚げされてすぐの水産物を取り扱う
- 基本的にセリで売買される
- 消費地卸売市場
- 消費地にある卸売市場
- 産地市場から集められた水産物を取り扱う
- セリ以外での売買も多い(相対取引など)
機能の違いによる区分とは別に行政上の分け方もあります。
行政的区分
- 中央卸売市場
- 国が管理。
- 中枢都市の市場は基本的にこっち。実際の内容
- 地方卸売市場
- 県が管理。
- 漁協が開設したのがほとんど。
- その他
- 民設で地方卸売市場の基準に満たさないもの。
産地市場でも消費地市場の役割を担っていたり、取扱量の減少から中央卸売市場が地方卸売市場に変わったりもするので混同しやすいのですが、以上のことを最低限押さえておけば十分かと思います。
登場人物
ざっくり以下の人たちを覚えておけば良いかと。。。
行政的区分
- 荷主
- 卸売業者に水産物を出荷する人達
- 漁業者や消費地の買受人など
- 卸売業者
- 卸売市場を仕切る人達
- 消費地卸売市場では”荷受”とも呼ばれます
- 買受人
- 卸売業者からセリや相対で魚を買う人達
- 産地市場の買受人を仲買、消費地市場を仲卸と呼ぶイメージ
(もしかしたら、仲買と仲卸については役割的な違いがあるかもしれません)
卸売市場の役割
水産庁によると以下の4つの機能があると言われています。
行政的区分
- 価格形成
- ”セリ”や相対で価格を決める
- 集荷と分荷
- 各産地や各漁業者から水産物を集めてそれを欲しい人に売る
- 代金決済機能
- 卸売業者が荷主と仲卸業者の代わりに代金の決済をします
- 仲卸業者→卸売業者→荷主(仲買、漁業者)というようなお金の流れになります
- 情報受発信機能
- 相場や水揚げ情報をやりとりして必要なところに必要な魚が配分します。
卸売市場はこのためにある
役割を4つに分けて紹介しましたが、卸売市場の役割は一言で言うと、需要と供給の実態を正確に市場価格に反映させることだと思います。
水産物の特徴として、価値判断の難しさと鮮度劣化の速さがあります。
水産物は同じ魚種であっても、サイズはもちろんのこと含脂率など(魚に脂がのっているかどうか)によって品質が大きく異なるため、需要が細かく分かれています。
例えば、同じサバであっても、缶詰用、養殖餌用、生鮮食品用など需要が様々です。
一方で漁獲される時は、多様な魚種が多様なサイズ入り混ざっていることが一般的です。
そのため、多種多様な水産物の価値を、鮮度が悪くなる前に可能な限り早く判断して、用途別に仕分ける必要があります。
卸売市場は水産物流通において需要と供給の実態を正確に市場価格に反映させるために重要な役割を担ってきます。
現実の水産流通は難しい。。。
先程も述べたように需要と供給をきちんと市場価格に反映させるのが市場の役割です。
でも実際はきちんと役割を果たせている方が少ないんじゃないでしょうか?
例えば2012年と少し古い論文ですが、日本の6種類の魚に対して、需要と供給がきちんと市場価格に反映されているのかを調べていますが、特に小売側が価格決定において有利な状況が多く見つかっています。
小売が価格決定において有利とは、簡単にいうと漁獲量(供給量)が減っても価格が上がりにくいということです。
そうなる一番の理由としては、水産物の鮮度低下の速さが挙げられています。
生鮮水産物はせいぜい1〜3日店頭に並べて売れなければ廃棄されます。そのため、廃棄リスクを避けるために小売側は価格を極力上げません。
また、この論文ではカツオとマイワシで特定されていますが、スーパーが成長した1990年代から小売側に主導の価格決定が行われるようになった(漁獲量が減少しても価格が上がりにくくなった)とよく言われています。
以下2つが主な理由です。
- スーパーによって一定の価格、品質での安定供給が今まで以上に求められるようになったため。
- 1990年代に円高基調が強まり海外の水産物輸入が拡大し代替財が増加したため。
資源と流通
価格が上がらないと資源は守れない。。。
水産流通と資源がどう関わっているのか?についてですが、水産物価格が上がりにくい現状が資源管理を難しくしています。
漁獲規制によって漁獲量が下がっても、その分だけ価格が上がるのであれば管理は実施しやすくなります。
例えば、サンマは加工せずに丸魚で売れるし目玉商品として集客力もあります。そのため赤字となってもスーパーにとってサンマを店頭に置くメリットがあるため、漁獲量が減って産地での価格が高くなったとしてもサンマの需要は減りません。
そのため、サンマは業界全体で解禁時期や漁獲量制限など,比較的細かい漁業管理を実施が出来ています。(ただ、サンマは多国籍にまたがる回遊魚なため資源管理がかなり難しい魚であるが、それに対応できるだけの漁業管理が出来ているのかは不明です。。。)
サンマのような魚種は稀で、通常は産地での価格が上がると魚はスーパーに買われません。そのため、漁業者や政府にとって資源の回復を目指そうにも、獲る量が減らすと、価格が上がることもなく漁業者収益が直接的に下がるため管理を実施しずらい現状があります。
魚離れってなに?
話は流通と少し逸れますが、魚離れが激しく鮮魚の消費低迷が続いている現状も管理を難しくします。
卸売市場には全量を買い取るという原則があります。この原則により漁業者が獲ってきたものが売れる売れないに関わらず、卸売市場は買い取らなければなりません。
そのため、魚の需要減少に関わらず魚は取られ続けます。。。
魚が高い → 消費者が買わない → 漁獲量を減らせない
→ 資源量が減る → 魚が更に高くなる→消費者がもっと買わなくなる
というような悪循環にどんどん陥っていきます。(某水産商社の取締役の方がニュースで良い水産物、高級魚は日本では売れなくなって来ているとも言っていました。。。)
長々と水産流通のことを主に書きましたが、”魚がいない”という現状は、政府や漁業者だけの問題ではないということを少しでも伝わればと思います。
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